ぶらり、大山 〜大山の不思議と素敵を語る〜 大山開山1300年祭 特別コラム

[第18回]大山の風を読む

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「大山に吹く風」と表現するとどんなイメージを抱かれるだろう。季節によって、気象条件によって、場所によって大きく変わりますが、実は大山の風には一定の規則性があります。

 

hp冬、凍り付く森.png
冬の代表的な風は北西からの雪を伴った冷たい風。西高東低の冬型の気圧配置になると決まって北西の出雲方面から強い風が吹きますが、スキー場のある大山中腹あたりは通常は猛烈にということはありません。大山(北壁)が風をブロックしているようです。ただし、山頂付近は猛烈な風雪となります。風が斜面を駆け上がりホワイトアウト状態となります。冬山の遭難はそんな日に多く発生します。冬でも晴れの日は風の状況は異なります。朝は陸風で南風が吹きますが、昼頃になると北東の海風に変わることが多いですね。そんな日にブナの森に入ると、特別な風景に出遭うことができます。抜けるような青空を背景に、葉を落とした裸木が枝を広げ、宇宙に交信をしているのでは…コスモサイズの風景です。大山観光局などではスノーシューでブナの森に出かけるツアーが用意されています。ご利用ください。

 

hp春、新緑の森.png
春の代表的な風は3つ。最初は3月上旬頃(早いときは2月)に吹く春一番の南風。気圧配置によってはどん吹きになることもあり、最も怖い風です。大山寺付近は風が加速して吹くようで、時には駐車している車を飛ばすほどになることも。そんな日は決まって強力なフェーン現象で気温が一気に上昇します。超強力なドライヤーで熱風が噴出している感覚で、スキー場の雪は一気に溶けてしまいます。一日で50㎝~1mくらいの雪を溶かすパワーがあります。スキー場はリフトも休止、雪も溶け、万事休すといった状況になります。運よく、春一番が吹かない年もありますが、その時には4月上旬まで雪が残ることもあります。4月になると、冬の名残りの冷たい北西風もありますが、心地よい北東の風が吹くことも増えてきます。北東の風は海から吹いてきますので、スギ花粉がありません。花粉症の方にとってはマスクを外してもいい嬉しい風です。5月になると天候も安定し、また気圧配置の関係もあり西風が吹くことが多くなります。高気圧にすっぽり覆われた時には東寄りの風もありますが、やはり代表する風は西風です。これは大山だけでなく山陰地方全体でも同じです。江戸時代、北前船がこの西風を利用して北東(北陸、東北、北海道)に向かって航海したことが記録されています。先人たちは風をきちんと読み、生活やビジネスにつなげていたのでしょう。

 

hp夏、大山二の沢.png
夏の代表的な風はなんといっても北東の風。いわゆる海風で、晴れた日の昼頃から夕方にかけては決まって日本海から爽やかな風が吹きあがってきます。ですが、近年は気候変動もあって南風が吹き続けることも多くなりました。平野部では気温が35度を超え、40度に迫ることもありますが、そんな日は南風によるフェーン現象が発生しています。南側から吹きあがった風は北側で一気に吹きおろし、驚くほどの気温上昇になります。面白いことに、そんな猛暑日は大山の南側の鏡ヶ成高原では気温が平野部と10度以上違い、快適な避暑地となります。フェーン現象の仕組みが分かればその理由は納得です。

 

hp秋、カエデの紅葉.png
秋の代表的な風は春同様に前半と後半で大きく変わりますが、晴れた日には北東の風が中心となります。朝は陸風でやわらかな南風ですが、午前10時頃になるとそよそよと北東の風が吹いてきます。気圧配置によっては西寄りの風になることもあります。11月になると、冷たい木枯らしが吹くことも増えてきます。多くは北西の強風で、ブナなど落陽広葉樹の葉を吹きとばします。11月下旬になるとほとんど全ての葉を落とし、樹々は雪に備えることに。もし葉が付いていたら雪が枝に積もり、枝や幹が折れてしまいます。これも自然の摂理ですね。

 

古代より"風"と"水"の流れを知ることは大切なこととされ、"風水"思想が育まれました。私たち大山の麓に住まう者は、大山の風や水の流れを知っておくべきですが、近代社会はその感性を奪ったのかもしれません。風水思想は日本文化(アジアの文化も)の根幹を支えてきましたが、やはり風や水の流れがわかっていることは、人々が生きるうえで大変重要なこと。科学技術がどんなに発展しても、風や水の流れをねじ伏せてコントロールすることはできません。逆に、今の時代は私たち人間の営みが、風や水の流れの乱れを増幅させ、さらに手に負えなくしているようです。潮目は変わってきたようで、人間は気がつき始めました。風や水の流れを知り、折り合いをつける営みにかえていくことが、世界的な課題(地球的課題)になってきました。そのシンボル的存在が、国連が定めた2030年に向けてのアジェンダ『SDGs(持続可能な開発目標)』なのだと思います。SDGs時代、風や水の流れを通じて私たちのふるさと、大山のあるべき姿、カタチに想いを寄せてみたいものです。

BUNAX

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