ぶらり、大山 〜大山の不思議と素敵を語る〜 大山開山1300年祭 特別コラム

[第30回]令和の時代を切り拓く 天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)

 

 5月1日、新天皇陛下が御即位され、令和の御代を迎えました。新たな時代の幕開けを慶びたいと思います。平成から令和へ時代がバトンタッチされた際(皇位継承)の重要な儀式のひとつが、「剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)」。新天皇誕生最初の儀式でした。この儀式は、宮内庁によると“皇位を継承された天皇陛下が、ご即位のあかしとして、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」(皇室経済法7条)である剣及び璽を承継されるとともに、併せて国事行為の際に使用される国璽及び御璽を承継される儀式”ということ。この「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」は、代表的には三種の神器(剣・玉・鏡)の事であり、剣璽(けんじ)はその中の剣と玉を意味しています。

 

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(写真:奥出雲から望む船通山)


 この剣、玉などの出自については神話の世界の事ということで、ことさら話題にされることはありませんが、実は剣は山陰(伯耆、出雲)と深い繋がりがあります。剣は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)で草薙剣(くさなぎのつるぎ)とも云われ、天皇の持つ武力の象徴とされています。剣は神話(古事記)においてスサノオノミコトが鳥上峰でヤマタノオロチを退治した時に、オロチの尾から見つかった神剣とされています。この鳥上峰は鳥取、島根県境(伯耆、出雲国境)の峰、船通山のことで、私たち鳥取県西部地域の母なる川・日野川、そして出雲の大河・斐伊川の源流域でもあります。山頂(標高1142m)は360度の大パノラマが広がる絶景地でカタクリの花が群生していることでも知られています。その山頂広場の真ん中に、「天叢雲劔出顕の地」と刻まれた堂々たる石碑と鳥居が大山の方向に向けて建っています。神話や地域の歴史が見直される時代の雰囲気のなか、昭和51年に建立されたようですが、施主は地元・日南町観光協会と横田町観光協会(現奥出雲町)ということで、地域の人々の想い、強力なメッセージが伝わってくるようです。

 

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(写真:船通山山頂)


 スサノオノミコトはこの神剣を姉神で高天原の皇祖神・アマテラスオオミカミに献上しました。続いて天孫降臨に際し他の神器と共に孫のニニギノミコトに託され、神剣は地上に降りたとされています。神剣は伊勢神宮に移され、後に東征に向かうヤマトタケルノミコトに託され、熊襲征討・東国征討を行ったということ。征討の際、天叢雲剣で草を刈り払い、火攻めを退けたということで、草薙剣と呼ばれるようにもなりました。ヤマトタケルの死後、神剣は伊勢神宮に戻ることなく、尾張氏(国造)が尾張国で祀り続け、熱田神宮の御神体として今に至ります。船通山で出顕した天叢雲剣は日本を切り拓いた剣として、現在も神話の中で燦然と輝いているようですが、実際に見た者はいないということ。

 

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(写真:日野川源流域 日南町印賀付近)


 天叢雲剣が鉄なのか青銅なのか、だれも知る由はありませんが、この神話を創作した際には下敷きになったトピックスがあったと想像されます。古事記の上巻(かみつまき)では、出雲系の神話で3分の1が占められていますが、それは大和朝廷が出雲に相当な配慮をしている証だと考えられます。当時、そしてそれ以前、出雲が豊かで強大なチカラを持っていたからですが、それは・・・その頃(約1300年前)、船通山の下流域(日野川、斐伊川流域)では豊富にある砂鉄と森林資源を使った鉄生産(古代のたたら)が始まり、鉄の農具なども造られ、稲作にむけての農地の開発も進んだことが背景だと考えられます。だとしたら、天叢雲剣は鉄製ということにしておきたいところですが、さて。

 

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(写真:雨の日刀保たたら)


 現在でも船通山の麓・奥出雲町鳥上地区にある日立金属の関連工場「安来製作所鳥上木炭銑工場(日刀保たたら)」では昔ながらの製法による“たたら製鉄”が行なわれ、日本刀の材料になる良質な玉鋼(たまはがね)を製造しています。雪の降る寒い時期に3回操業されるのみですが、近年の日本刀ブームもあり全国的に注目されるようになりました。「たたらの炎は日本のものづくりの象徴」ということで、多くの日本を代表する製造業の技術者が視察に来るようにもなりました。

 

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(写真:船通山麓 実りの風景)


新しい時代・令和が始まりましたが、平成の時代以上に様々な技術革新が時代を切り拓いていくことになりそうです。その革新的な技術を支えるのが“たたら製鉄”をルーツに持つ鋼の製造とも云われています。1300年の時を超えて、天叢雲剣ゆかりの秘術が時代を切り拓く、令和の幕開け、しっかり楽しみたいものです。令(うるわ)しき平和な時代、そこには豊かな実りの風景が広がっているはずです。

                                                                                                       (BUNAX)

 

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